一般社団法人鹿児島県設備設計事務所協会
会 長 田中 義人
早いもので、本年度は会長職2期目最後の年度となりました。1期目は新型コロナ感染症の影響で思うような協会行事も行えず過ぎましたが、2期目よりはその影響もなくなり通常の活動が皆様のご協力により開催できますことを、まずは御礼申し上げます。
国内では、現在の円安、株高による景気回復とそれに伴う物価高と大手企業の賃上げも実質賃上げ率は上がらず、また中小企業の賃上げもさほど進まないため個人消費の盛り上りに欠け、景気の好循環にはいまだ到達していないのが現在の状況のようです。建設業界も長引く労働力不足や資材高騰・資材不足などの不安要因は変わりません。世界情勢ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、昨今の中東情勢についても一歩間違えると日本にも多大な影響を及ぼす事態になりかねません。このようなことは、私たちでは解決できない問題ですが、その動向を注視し影響を予測することは必要なことだと思います。
さて、私たち設備設計及び設備工事に関わるものとして、やはり次世代を担う若手確保が一番の課題ではないかと考えます。これは、全国的な傾向であり、人口減少が進む地方にとってはさらに難しい課題と思います。設備設計という職業は、認知度が低いことや専門の学科がある学校が少ないなどの要因もあり、即効性のある対策がないのが現状だと思います。協会では、一昨年の九州・沖縄ブロック協議会鹿児島大会において、決定した共通のテーマ「次世代の担い手確保」の取り組みとして、インターンシップの取り組み、SNSを使った設備設計の発信を活動として行っています。さらには、協会会員が受注している業務について、効率的に業務が行えるように発注官庁との調整役を担っていきたいと思います。
本年1月には、国が定める業務報酬基準が5年ぶりに改訂されました。平成26年の建築士法改正により、これまでの工事金額による算出方法から床面積による方法となり、建築関係団体から選出された建築士事務所への実態調査(アンケート)の結果を統計処理して出された数値により業務量を算出するようになっています。アンケートは、登録事務所が過去に実績のある「標準業務」が対象であり、設計については標準業務である基本設計が入っていなければ、アンケートに回答しても採用されていません。また、改修設計業務については告示ではなく国交省の基準により、想定した図面枚数を基準に算出することになります。従って、従前の算定方式と比較すると業務報酬が厳密な算出方法であり、その基準が規定している標準業務や標準業務でない追加的な業務の理解、建築物の類型や難易度の判断などが重要になります。
又、改修設計においては単に改修という認識ではなく、基本設計の必要性や既存図面の有無や現場との相違などを考慮した業務量算定が必要になります。本年度はこれまでの告示98号による算定で、来年度から告示8号での業務発注が行われるものと思われますが、それまでに十分な準備が必要と考えます。次世代の担い手確保のためにも、適正な業務報酬を確保することは重要なことです。設備設計は、社会的に期待される設計図面のBIM化や省エネを推進するためのZEBなどの新しい技術の習得についても求められており、それらに対応していかなければなりません。そのためにも、協会正会員、パートナー企業会員の皆様のこれまでと変わらぬご理解とご協力をお願い申し上げます。
まとめとして、昨年同様以下を本年の協会運営における事業方針と致します。
Ⅰ.協会活動の活性化をめざして
- これまでの協会行事をさらに発展し、次世代協会会員へバトンタッチします。
Ⅱ.脱炭素化、デジタル革命などの社会変革に対応するために
- BIM推進の方策を検討します。正会員が導入したBIMが協会で普及する事業を計画します。
- 日設事連のWeb研修会を協会員へ広くPRし、有効に活用してもらえるようにします。
Ⅲ.鹿児島県の設備設計を理解してもらうために
- 鹿児島県及び鹿児島市との意見交換会を行い、協会活動の理解が深まるよう努力します。
- 各自治体へ伺い、協会のPRと業務の発注及び業務報酬基準の適切な運用をお願いします。
- 学校関係へ伺い、協会のPRを行います。
- 協会誌「人・環境・みらい」を本年も発行し、昨年同様協会会員や発注官庁と共に学校関係等へ配布します。
Ⅳ.設備設計の未来を見据えて
- 業務報酬基準の適切な運用を発注官庁へお願いし、働き方改革へつながるよう努力します。
- 次世代の担い手を育成していくための協会活動を進めます。
Ⅴ.全会員参画の運営
- 会員としてのメリットが、全会員に共有できる協会運営を基本とします。